砂の籠

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 金が無いがために、大学への進学は国公立にしか望みがなかった。興味のある事柄は多少なり存在したから進学を試み、その間いつもより少しだけ努力を惜しまず、そして結果、受験には失敗した。特に悔いはない。  ただ、「興味のある事柄」に触れる合法的な理由を持つことができなくなった。そして私は今こうして小窓を眺めている生活を余儀なくされたわけで、それについてはまあ、少々思うところもあるのだが、今は割愛しようと思う。  小窓に生きる生活も存外、悪くはない。  小窓は三つほどあるが、ひとつは大概が真っ青だった。ひとつは影を落としたコンクリートのような色。もうひとつはカーキ色。カーキの窓からは、時たまに可燃物が入ってくる。と、いっても自発的に可燃物が行動しているというわけではなく、外にいる彼の手によって差し入れられている。ここは諸君の知っている世界とは程遠い場所であるし、諸君には恐らく想像もつかないであろう環境だが、モノ自体は諸君もよく知っているものと変わりない。薄くなった布団と、脚のがたつく小さな木のテーブルと、窓と、扉。扉があくことは滅多にない。私がここにきてすぐのころには何度か開いたが、開かなくなってから何年が経ったのかも定かではない。そういえば、青い窓からは格子が見えるから、きっとそこからは私は出られない。     
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