砂の籠

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 その公園は広くはなかった。ベンチに座った視界にすべてがおさまる程度の規模だった。街路に植わっているものとは恐らくは異なるのであろう緑が高く茂り、陽を遮る場所にベンチがあった。白い塗装のはげた、恐らくは鉄だろうパイプのようなものがユー字に地面に刺さった低い柵のようなもので、車一台通れようかという程度の道路と区切られていた。芝などが敷いてあるわけではない、ただの砂利のような砂のような地肌がむき出しになった足場。コンクリートブロックで区切られた砂場。青い塗装のはげた円錐状の遊具。黄色の塗装の真新しいブランコ。うるさい蝉の声。時折現れる白い野良猫。  その日の夕方も、私はしばらく、そこにひとりだった。  彼とはその時、初めて出会った。  彼はぬっと入ってきた。私の視界に。  ぼうっとしていた私を浮浪者か何かだと勘違いしたのだろうか、初めてこちらを見た時のその目は少々汚いものでも見るように細められ、眉も寄っていた。  「やあ、初めまして。」  私は構わず声をかけた。右手をひょいと挙げる、軽薄そうな仕草のおまけつきだったことと記憶している。  「ああ、初めまして。」  夕方だというのに、暑いですね。彼は気さくを装うつもりか、ネクタイを緩めるような仕草をしながら付け加えた。私も知っている。ネクタイというものは、夏場は特に、首元に布を貼り付けるための布のようなもので、非常に息苦しく、そして見苦しい。  「そうですね。いやあ、一人暮らしの若者には、ここまで暑い中でクーラーをつけっぱなしにする金もありませんで。すこし和らぐまで、いつも私、ここにいるんです。」     
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