1. ヒマワリ

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今西恭(いまにしきょう)……」  (ほうき)を忘れたと言って、家に引き返していた祖父の声が背後からした。 「おじいちゃん。……知ってる人?」  祖父の大智(だいち)は足場の悪いお墓の階段を大股で駆け上がってくる。   「おじい……」  言いかけた千尋の言葉を遮るように、大智が箒を振り上げた。 「…………!!」  驚いた千尋はそのまま両手で口元を押さえた。  祖父の振りかぶった箒を青年がひょいと避ける。  箒に全体重を乗せたまま大智は地面へと突っ伏した。 「あ」青年からぽろりと言葉がこぼれ落ちる。 「おじいちゃん!!」  千尋が慌てて駆け寄った。 「大丈夫!?」 「イタタタタ」  千尋の腕に手を置き大智が上半身を起こす。 「直情的なとこ、変わってないね」  冷静に祖父を評する青年を千尋は睨みつける。 「何言ってるの!? お年寄りに向かって!」 「……こっちがたぶん被害者ですけど」  確かに殴りかかったのは祖父で、彼はただそれを避けただけ。
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