3. 時間の箱

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 カチャリとノブを捻る音が玄関から聞こえてきた。  まずい  慌てて便箋を箱に収めるとふたをしてスーツケースに押し込んだ。 「ただいま」 「お…おかえり」  千尋は背中を向けてごしごしと目元を擦る。  しゃくり上げるように溢れた涙は、抑えようとすればするほど止まらない。  ズルッと鼻をすする。 「挨拶したら花束もらっちゃったんだけど…………どうした?」    あ……  千尋は床に置いたDVDの横にある封筒に気がついた。  その時には恭もその封筒を見ていた。
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