3. 時間の箱

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「手紙……見た?」  千尋がサッと顔を上げた。 「ご……ごめん、恭。私…………」  ヒクヒクと恭の顔を見るとまた嗚咽がよみがえる。  ため息をつきながら恭が千尋の隣にしゃがみこんだ。  怒らせちゃった  当たり前か 「どうして千尋がそんなに泣くんだよ?」  恭の手が千尋の頬に触れた。  白い指の隙間に千尋の涙が滑り込む。  いたわるように  包み込むように  そっと受け止める。  恭が困ったような優しい笑顔を浮かべた。 「凄く悲しくて……依里の思いが悲しくて。恭の思いが悲しくて」  途切れ途切れの言葉で、いい年をしてって自分でも思った。  ホントバカだな私  恭が膝を立てると千尋の頭を胸に押し当てて両腕で覆った。 「泣いてくれてありがとう……」  千尋は恭にしがみついた。
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