3. 時間の箱

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―――― 「おかあさぁーん。ほしすごいねえ」 「すごいねえ」  暗闇を照らし出す億千の星 「てがとどきそうなのにぃ」  小さな木の葉みたいな手を一所懸命上へ伸ばす。 「おかあさんものばして! とどくかもよ。おとなだし」  母親も大きく空に手を伸ばす。  何度も何度もそうしてきたように 「おかあさん! だっこして」  母親は笑うと天にむけられたままの愛らしい手にキスをする。  そしてその小さな体を高く抱き上げた。 「いつかとどくかなあ」 「そうね。きっといつかね……」  きっといつか  遙か遠くの  ――――あなたに届く日が来ますように―――― 〈完〉
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