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一話「入学式」
四月八日。
私は身支度を済ませて駅に向かうバスに乗る。そのバスが駅に着いたら電車に乗る。周りにいる生徒達を見てこの子たちも入学式なのだろうかと思いつつ眺めている。眺められていた子たちの中で目が合った者達は照れ笑いしている。
「お姉ちゃん、もし友達にも先生にも言えない相談があったら必ず私に電話なりと連絡をすること。分かった?ねぇ、私、お姉ちゃんを心配して言ってるのにゴミみたいな新入生なんか見てダメじゃない」
ムスッとした表情の中で彼女を見る周りの視線がなんか怖い。
「その新入生の中に私も入ってるんだけど?」
「お姉ちゃんは特別よ。海に捨てられた貝殻の中で形が歪なのと綺麗で輝かしい貝殻があるように。お姉ちゃんは綺麗なんだからね」
「約束するわ」
あまりにおしゃべり過ぎな彼女の唇に私の唇をそっと合わせる。
「やめてよね?人前でこんなことされるなんて……もぅ……いくわ」
「えぇ。またね」
彼女に対する目線の半分が今となっては私に向けられている。それもそのはず、お姉ちゃんなのに妹にあんなに心配されるなんて変な目で見られるに決まっている。それは物心の付いた子どもの頃から親からも大人からもよく言われてきたことだ。私には今となってはどうってことない。だからこそ、私は堂々と学校の最寄り駅に着いた。とは言っても彼女が降りた一つ隣の駅ではあるが。
私が学校に着いてクラス名簿の貼ってあるパネルを見ようと足を進めようとした。しかしそのパネルから少し離れて本を読んでる少女に足が進んでしまった。
「あの……」
「あなた、新入生?私は夜那須蛾咲よ。私も新入生なの。一緒になれたらいいわね」
「えぇ」
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