SIX RULES

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 そして、ナイフはアメリカ製のベンチメイド・9050AFO。折り畳み(フォールディング)の、バネ仕掛けでバシンとブレードがワンタッチで開く、いわゆるスウィッチ・ブレードという奴だ。ブレードの約半分、根元近く辺りがノコギリのような波打つ刃が付けられている仕様で、長年ハリーが愛用してきた物だった。 (少ないな、流石に)  文章にすると凄そうに見えるが、所詮は単なる拳銃とナイフがひとつずつというだけだ。普段ならこれでも問題ないのだが、ミリィ・レイスの話によると敵の数は五十人近い。それだけの数を相手にするのに、流石に拳銃一挺とナイフ一本だけじゃあ流石に無理があるってものだろう。  ハリーは一度右腰、ズボンの内側に取り付けたインサイド式のホルスターからUSPコンパクトを取り出し、弾倉を抜いて残弾を確認。それから弾倉を差し直し、スライドを引いて弾を薬室に装填しておいた。  その後でサム・セイフティを一度下に押し下げて、撃鉄を安全位置に戻す。次に上へ押し上げれば、安全装置が掛かるという寸法だ。USPシリーズのサム・セイフティは通常、このようにデコック(撃鉄を安全な位置へ戻す機構)とセイフティを兼ねているから使い勝手が良い。しかも、撃鉄を起こしたままでも安全装置が掛けられる。 (何かしら、現地調達する必要があるな)  USPコンパクトをホルスターに戻しながら、それしかない、とハリーは腹を括っていた。敵が持つ武器が何であれ、それを奪う必要がある。例えすぐ暴発しそうな安物のライフルであっても、無いよりは格段にマシだ。 「――――よし、これでこっちは片付いた」  と、そんな折だった。少しの銃声が響いた後に、近くからそんな誰かの声が聞こえて来たのは。  ザッザッという足音が、確実にこちらに近づいてくる。気配から察するに、おおよそ二人ほどだろう。それに気付くなり、ハリーは咄嗟に茂みの中に身を隠した。  その茂みの中で少しだけ潜んでいれば、やはり体育館の裏手に現れたのは二人だった。完全装備で、手には自動ライフルを持ち。そして顔は黒い目出し帽(バラクラバ)で目元以外を隠した、まるで軍の兵士か警察の特殊部隊みたいな出で立ちの二人組だ。  どうやらこの二人、この一帯に誰か隠れていないか探しに来たようだ。相手が弱っちい学生やただの教師だけだからなのか、妙に気分が緩みきっているような感じだ。 「フッ……」
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