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男が吐いたのは、自分らが"スタビリティ"に雇われた傭兵であること。今回襲撃した目的が園崎和葉の確保にあることと、そして学園を襲撃するに当たっての交戦規定だった。園崎和葉以外は、全て殺せという命令を……。
「しゃ、喋った。俺が話せるのはこれで全部だ。だから、殺さないで――――」
「結構」
命乞いをし始める男だったが、しかし話を聞き終えたハリーは無慈悲にもその男の眉間を一撃で撃ち抜いた。
コルダイト無煙火薬の軽快な撃発音が響き、真鍮製の金色に光る空薬莢がハリーの足元に落ちた時。彼の構えるUSPコンパクトの銃口が睨んでいたその男も、眉間に小さな紅い血の華を咲かせながら、体育館の壁にもたれ掛かる格好のままで絶命していた。
「ふぅ……」
小さく息を漏らしながら、ハリーは構えていたUSPコンパクトを下ろし。そして腰のホルスターにしまい直すと、息絶えた二人の男の身体を物色し始める。
すると、意外に収穫は多かった。手に入ったのはQBZ-97自動ライフルとその予備弾倉が幾らか、そしてスターム・ルガーSR9自動拳銃が二挺だ。加えて、破片手榴弾も二つほどある。
QBZ-97は中国製の自動ライフルで、中国北方工業公司(ノリンコ)の製品だ。弾倉を差す部分やカートリッジの撃発を司る機関部がライフルの後方、銃床部分にある"ブルパップ式"というタイプのライフル。QBZ-97は人民解放軍用の独自規格5.8mm弾を使うQBZ-95を、国際的にポピュラーなNATO規格5.56mm×45弾に対応させた輸出モデルだった。当然、米軍のM16自動ライフル用の弾倉が使える。
二人ともそのQBZ-97を持っていたから、ハリーは一挺は頂戴し、もう一挺は分解してからパーツを別々の方向に投げ捨て、二度と使えなくしておいた。そして手に入れたスターム・ルガーSR9拳銃に関しては、ズボンの前側へベルトに挟む格好で雑に差し込んでおく。
「さて、と……」
右手で銃把を握るQBZ-97を両手で保持しながら、ハリーはスッと立ち上がる。これから先に激しい戦いがあることは明白。ハリーは覚悟を決め、足早に体育館裏から立ち去った。
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走り、走り、走り。何かに追われるように必死に走り抜けた和葉が最後に辿り着いた先は、普段使う新校舎の隣にある古びた旧校舎、そこの三階にある使われていない校舎だった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………!」
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