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息を切らしながら空き教室に飛び込み、後ろ手に戸を閉めて鍵を掛ける。反対側の扉にも同様に鍵を掛けて、そうすると和葉はそのまま脚の力が抜けてしまい、扉に背中を預けるようにしながらずるずると座り込んでしまう。
「何よ、どうなってるのよ……!?」
まるで、ワケが分からなかった。何が起こっているのか、何がどうなっているのか、和葉の混乱しきった頭では、さっぱり理解することが出来ないでいた。
教室の奥、窓際に積み重ねられた机と椅子たちの間に入り込むようにして、和葉が身を隠す。長らく誰も使っていないのかやたら埃っぽかったが、そんなことは気にならなかった。まして、そんな些細なことを気にしている場合でもない。
「と、とにかく、アイツに連絡を……っ!」
――――アイツなら、ハリー・ムラサメなら何とかしてくれる。
我ながら都合が良いとは思うが、しかしことこうなってしまった以上、和葉が頼れる相手といえば最早彼以外に残っていない。幸いにして、何かあった時のためにと連絡先は強引に交換させられている。
和葉は制服のポケットから震える手で自分のスマートフォンをなんとか引っ張り出し、そしてディスプレイを点けた。
「ちょっと、どういうことなの……?」
――――しかし、スマートフォンの画面端に示される電波表示は、完全な圏外。動揺した和葉が何度電源を入れ直してもそれは変わらず、スマートフォンのディスプレイはただ、此処が既に電波の届かない圏外に、完全な陸の孤島と化していることを暗に和葉へと告げていた。
「っ……!」
諦めて、和葉はスマートフォンをポケットに戻す。そして、蹲った格好のまま、両手で耳を塞いだ。
これ以上、和葉は聞きたくなかったのだ。外で絶え間なく轟く激しい銃声と、木霊する怒号と悲鳴。確かな実感を伴って聞こえてくる、人の命がゴミのように刈り取られていく音も、声も。これ以上、和葉は聞きたくなかった。
「何よ、何なのよ……っ!!」
和葉は、気付いていた。自分がとんでもない事態に巻き込まれてしまった――――いや、とんでもない事態を引き起こしてしまったことを。自分の油断と傲慢のせいで、この事態を引き起こしてしまったことに、もう気付いてしまっていた。
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