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僅か数十メートルという至近距離を、しかし音の壁を容易に突き破る速さで5.56mmの小口径・高速ライフル弾がハリー目掛けてスッ飛んでくる。外れた弾は木の幹やロータリーの周囲を囲む岩に激突し、表面を抉りながら弾け飛ぶと高音を奏でながら何処かへと吹き飛んでいく。
「こんなこと、してる場合じゃないんだけどな……!」
そんな中でハリーは更に反撃を加え、QBZ-97で更に一人を撃ち倒しつつ、独り言で毒づく。敵のライフル弾で弾けた岩の破片がハリーの頬を浅く掠め、そして横一文字の小さな切り傷を形作った。
更に射撃を続けるハリーだったが、やがてQBZ-97の三十連弾倉も底を突く。小さく舌を打ちながら岩の陰に屈んだハリーは空になった弾倉を抜き取り足元へ投げ捨てて、懐から取り出した新しい物を銃床部分の機関部へと差し直す。キャリング・ハンドル(銃の上に生える、取っ手のようなもの)の下にあるコッキング・レヴァーを引いて弾倉の弾を薬室へ再装填すると、しかしハリーは再び撃とうとはしなかった。
代わりに、ニヤリとしながら懐より破片手榴弾を取り出す。これで攪乱し、カタを付けるつもりだ。
ハリーは左手に持った手榴弾の安全ピンを右手で抜き取り、そして安全レヴァーも外してから、敵の方へと向けて思い切り放り投げる。カランコロンと音を立ててアスファルトの上を転がった手榴弾は、安全レヴァーを外してからキッカリ五秒後に爆ぜる。
突然飛んで来た手榴弾と、目の前で巻き起こった爆発に、最後に残っていた一人と応援に駆けつけた数人はひっくり返るように驚いていて。しかしその隙にハリーは駆け出すと、今度はフルオートでQBZ-97を滅茶苦茶に撃ちまくり牽制しながら、そのまま校舎の方へと一直線に駆けていった。
QBZ-97の弾が切れた所で、丁度目の前にあったガラス窓に向かってハリーは地を蹴る。飛び上がった彼はタックルするような姿勢で薄い窓ガラスを突き破り、教室の中に飛び込んだ。
くるりと大きく前転するようにして膝立ちに起き上がりながら、QBZ-97から手を離したハリーは腰からUSPコンパクトを抜いて構え、教室内に注意深く視線を這わせる。
しかし、敵の姿は無かった。ふぅ、と小さな息をつきながらハリーはUSPコンパクトを戻し、弾切れになったQBZ-97の弾倉を交換する。
「……酷いもんだ」
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