SIX RULES

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 煙のように埃が立ちこめる中、やはりドスンドスンといった大きな足音と共に巨大な体躯の男が空き教室の中に踏み込んでくる。やはり190センチを越える巨大な体格に、それに見合うほどの凄まじいはち切れんばかりの筋肉の持ち主だった。  アジア系で、髪は黒で短く。手には血が染み付いた指ぬきのグローブを嵌め、隆々とした筋肉の張り出す身体には黒いTシャツとジーンズ、そして袖を折った黒い革ジャケットを羽織っている。獰猛な風貌の顔の目元にこそ丸いサングラスを掛けていたが、しかし直接双眸を見なくても分かるほどに、男が滲ませる雰囲気は闘犬のように獰猛な色をしていた。  ――――ジェフリー・ウェン。通称"ウォードッグ(戦争の犬)"。  和葉の前に現れた巨漢は、まさにそのウォードッグだった。にひひ、と犬歯を剥き出しにした獰猛すぎる笑みを湛えながら、ゆっくりと和葉の方に歩み寄ってくる。 「居るんだろォ? 出てこいよ」  ボソリとそう言うと、ウォードッグは積み上げられていた机と椅子――――和葉の隠れるそこへ向け、凄まじい回し蹴りを放った。 「きゃぁぁぁっ!?!?」  思わず上げてしまった和葉の悲鳴と共に、ガラガラと物凄い音を立てて机と椅子が盛大に吹き飛んでいく。  そうすれば、和葉の身を隠していた物はその半ばが消え失せて。机の間に露わになった縮こまる和葉の姿を見下ろしながら、ウォードッグはニィッ、と凶暴な笑みを浮かべてみせた。 「見つけたぜ、荷物(パッケージ)」 「ひっ……!?」  見下ろしてくるウォードッグの巨体と、そのあまりに凶暴すぎる風貌に、和葉は本能的な恐怖を覚えてしまい。止まっていた筈の涙が、紅い瞳から再び止めどなく滲み始めてしまう。  その間にも、ウォードッグは邪魔な椅子と机を片手でひょいひょいと放り捨てていて。そうすれば、遂に和葉とウォードッグの間に隔てるものが何一つとして無くなってしまった。 「悪いな、仕事なんだ」  詫びる気があるのか無いのか、ニヤニヤとした顔のまま和葉を見下ろすウォードッグが、とりあえずといった感じに詫びの言葉を継げてくる。 「助けてよ……っ!」  遂にそんなウォードッグから眼を背けると、涙を滲ませながら和葉が呟く。懇願するように、祈るように。 「助けてよ。ねぇ、ハリー…………っ!」 「――――その依頼、確かに承った」
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