SIX RULES

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 そんな短い会話を和葉と交わしながら、ハリーはQBZ-97自動ライフル片手に空き教室からチラリと廊下へと顔を出し、周囲に敵の気配が無いかを注意深く探る。廊下に気配が無いことを確認すれば、「来い、行くぞ」と言って和葉の手を引き、旧校舎からの脱出を開始する。 「ホントに、逃げられるの!?」 「やってみなけりゃ分からん、そんなこと!」  手を引かれながら一緒になって走る和葉に問われたハリーは、そう答えた後に、 「だが、俺を信じろ!」  廊下を走る脚を止めないまま、彼女の方を振り向かないまま。彼はただ、前だけを見据えたまま力強く言った。 「……分かった、貴方を信じる」  すると、何故か和葉は安堵したみたいに小さく微笑む。しかしそんな彼女の微笑みを、背中を向けるハリーが気付くことはない。  そうしてハリーが和葉の手を引いて廊下を駆け抜け、階段に到達した時。その時ハリーは、階段の下から上がってくる四人の敵兵と運悪く鉢合わせしてしまった。 「和葉っ!」  突き飛ばすようにして和葉を後ろに逃がしながら、同時にハリーは片腕でQBZ-97を腰溜めに構えて引鉄を引く。 「きゃっ!?」  短い悲鳴と共に和葉が尻餅を突く頃には、ハリーが片腕で構えるQBZ-97自動ライフルからは銃口で瞬く凄まじい火花と撒き散らされる大量の空薬莢と共に、豪雨のような勢いで5.56mm弾が撃ち出されていた。  彼の強靱な右腕を、軽いが確かな重さを伴う小口径ライフル弾の反動が震わせる。あちらこちらに好き勝手暴れる銃口を無理矢理に制御しつつ、しかしかなり雑な狙いでQBZ-97を横薙ぎに掃射した。  すると、相対する四人の内、先頭に立っていた二人は腕や胴体にハリーの撃ち放ったライフル弾を喰らい、後ろへ大きく吹っ飛ぶようにして仰向けに倒れる。胸に着けた防弾プレート・キャリアのせいで致命傷には至らなかったが、しかし階段を踏み外すようにして大きく後ろ向きに吹っ飛んだ二人は、一様に踊り場で後頭部を強打した。  アレでは、仮に死んでいなかったとしても暫くは動けまい。階段という地形が、ハリーの味方をしたのだ。  しかし、後ろに控えていた二人はハリーを見るなり階段の更に下へ飛び退いていたから、撃ち放った弾を喰らうことはなかった。 「チィッ!」  ――――二人はひとまず無力化、次は後方の二人だ。  大きく舌を打ちながら、ハリーの頭では凄まじい勢いで思考回路に電流が駆け巡る。
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