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雑に掃射したQBZ-97の弾が切れると、ハリーはそれを思い切り階段の方に向けて投げつけた。唐突に飛んで来た自動ライフルに、一瞬だけ驚く残り二人の傭兵たち。
「引っ掛かったな……!」
二人が見せたのは、ほんの僅かな隙だった。しかし、それはあまりに致命的だった。
QBZ-97を投げた直後、ハリーはズボンのベルトへ雑に差し込んでいたスターム・ルガーSR9自動拳銃を両手で抜き、二挺拳銃の格好になりながら地を蹴り、階段の下方へ向けて思い切り飛ぶ。
着地し、くるりと一回転するように立ち上がれば、ハリーの両脇にはあの二人の姿があった。
「二人仲良く、あの世行きだ」
そうすれば、ハリーは起き上がりざまに両腕をクロスさせるようにして両脇の二人の顎先へとスターム・ルガーSR9の銃口を突き付け、そして無慈悲に引鉄を絞る。タン、と軽い銃声が二つ分重なって響けば、顎先から頭を撃ち抜かれた二人がバタリ、と力なく斃れる。明らかな即死だった。
ひとまずの殲滅を確認すると、ハリーはついでと言わんばかりに先程後頭部を打って気絶した二人の眉間も撃ち抜き、それからスターム・ルガーSR9をズボンとベルトの間へ押し戻し、地面に転がっていたQBZ-97を拾い上げた。
「もう大丈夫だ」
QBZ-97の弾倉を交換しながら、視線を仰ぎ見ながらハリーが呼びかける。すると曲がり角から和葉がおそるおそるといった風な顔で顔を出してくるものだから、ハリーは小さく笑い「この通りだ」と肩を竦めてみせる。
「……驚いた、貴方って強いのね」と、おっかなびっくりといった足取りで合流しながら和葉が言う。
「当然だ」QBZ-97のコッキング・レヴァーを引きながら、ハリー。「こんな時の為に、俺が居る」
「それより和葉、急ごう。この調子だと、敵も続々と集まってくる……」
そう言って、ハリーは再び和葉の手を取り。そうして階下へと向け再び走り始めた。
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二階を素通りし、一階まで階段を駆け下りて。そして昇降口の方へ向かう――かと思いきや、ハリーはまるで別方向に向けて廊下を駆け出した。
彼に手を引かれるまま、和葉が彼と共に辿り着いたのは旧校舎一階の端にある物理室だった。
「どうして、こんな所へ?」後ろ手に物理室の引き戸を閉めながら、肩で息をしつつ和葉が問いかける。
「表は確実に抑えられてると見て良いだろう。それに、裏に回るならこっちの方が近道だ」
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