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月明かりが照らす山道を一人の少女が歩んでいく。腰に刀を帯び、紅色の着物を身に纏う少女の長い黒髪が夜風に靡いた。
何かの気配を感じ取り、猛禽類のような鋭い目を更に鋭くさせ、周囲を警戒する。
ガサガサと音を立て、草場から何かが飛び出した。少女は刀を抜き、飛び出してきた“何か”と対峙する。
「はぁ…………、面倒くさい」
ため息混じりに呟く。
月光に照らされ鈍く輝く刃を横一閃。一瞬にして草場から現れた鬼“餓鬼”を葬り去った。
何事もなかったかのように刀を鞘に納め、少女は歩みを進める。
本来ならば、日が暮れる前に宿場町に着いている筈だった。しかし、道中、山賊や先程の餓鬼のような鬼に襲撃され足止めをくらい、おかげでこんな真夜中まで歩く羽目に。
そろそろ野宿でもと思った矢先の餓鬼の襲来。
「安心して野宿することも出来ないわね……」
腰掛けるのに丁度良い岩を見つけ座る。
流石に丸一日も歩き続け疲れてきた。体力には自信があったのだが、今日──いや日を跨いでいるから昨日か。昨日はいつにも増して妖し共との戦闘が多かった。だからなのか疲れてしまったのかもしれない。
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