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頭を抱え悩んでいると、祭壇の奥にある通路から足音がしてきた。
…………カツ、カツ、カツ。
俺は、唾を呑んだ。怖い……。只々、怖い。
だって、こんな誰も居なさそうな薄暗い場所で人の足音とか聞こえたら怖いでしょう!
ビビってんのかって? ええ、そりゃビビってますよ、それが何か?
ぼかぁ、夜中に一人でトイレにも行けないビビりですよ! 見た目が平凡なだけで、中身は超が付く程のビビりなんだよ!
もうね、チビりそうなくらいガクブルですよ。
夢なら覚めてくれ!
そう思い、目を瞑りまた開く。が、残念、覚めてくれませんでした…………。
どんどん足音が近付いてくる。
もう、ダメだぁ!
アルマジロよろしく、俺は丸く踞った。
「何をしているのですか?」
優しげな声が頭上から掛けられた。顔を上げるとそこには、美しいを通り越し神々しささえ感じる女性が立っていた。
青み掛かった銀髪に、儚げな垂れ目。白を基調とし、菊の華柄の装飾が成された和装に身を包む女性が俺に手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……」
嫋やかに微笑む女性に対し、俺はドギマギしつつ返事を返した。差し伸べられた手を取り立ち上がり、様々と女性を見詰める。
この女性、人間なのかな? 余りにも美しすぎると言うか。綺麗な薔薇には棘があるって言うし、慎重に対応しないといけないのかも……。
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