第2話 学園へ

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 スニーカーも脱ぐのも忘れて家の中へと進む。  臭いはどんどん濃くなっていく。  リビングのドアを開け、部屋の明かりを点けた時、思わず息を呑んだ。  最初に飛び込んできたのは赤黒い色。それもリビングの床や壁や天井にまで広がった赤黒い物……有希がそれが何であるかをすぐに理解できなかった。  しかし、床に無造作に置かれていた物を見て、ようやく分かった。  そこにあったのは大小無数の肉片であった。その中には洋服の一部をつけたままの物もあり、それは両親が来ていた洋服そのものだった。  ……血……全部、血だ……  おそらく両親が殺されている、という事なのだろうが、彼がそれを受け入れるまでには、僅かな間が必要だった。  ……弟は……  リビングを見回しても、両親の物とおぼしき肉片は見つかるが、弟の服をつけたままの物はなかった。  血だまりの中を走る。  奥の扉を開ける。普段は入る事がない部屋へ。  勢いよく部屋に入る。  弟は、部屋の隅で血塗れになっていた。  だが、もう一つ異質な存在があった。  人影である。  その場から離れなければ、と体が反応した。  刹那、人影は有希の目の前にいた。相手の手が胸に触れている。  無音の衝撃があった。  吹き飛ばされ、リビングの血だまりの中へと転がり、派手な音を立てて食器棚に背中を打ちつける。ぶつかった拍子に棚から皿が何枚も落ち、有希の頭の上にも落ちてくる。 「いってぇ……」  思わず声が出た。  今まで経験した事がない痛みだった。 「……ほう……」  感心したような男の声がして、人影は玄関へと走り去る。 「待て!」  有希も立ち上がり、追いかける。  外へ出る。  夢中で後ろ姿を追う。  胸の痛みは引かなかったが、体は軽かった。夜風が頬を切る。速度はぐんぐん上がっていく。  接近した瞬間に人影の顔を見た。それは男で、年齢は三〇代後半くらいだろうか。額から右頬にかけて大きな傷があった。一度見たら忘れない特徴である。  だが、追跡は長く続かなかった。  血だらけの制服を着た学生が走っているのを、警察は見逃さなかった。  体当たりされ、その場で捕まった。  程なくして家での惨状が分かると、逮捕された。
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