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一人の少年が、走っている。
しかし、彼の顔を見てすぐに男性である、と認識できる者はごく僅かである。
美しい顔をした少年であった。
黒髪を振り乱し、人の間をすり抜けるようにして、夜の街を駆ける。
すれ違う一瞬しか目にする事はできないが、中性的なその容姿に、男性は思わず振り返り、女性はうっとりする、そんな美貌の持ち主だ。
繁華街から暗い路地へと向かう。
その様子はそよ風のようであったが、何故あんなに美しい人が急いでいるのだろう、とその場にいた者達は皆同じ疑問を心に抱いた。
彼が走った後を三人の男達が怒りの形相を露わにして追いかけてくる。
皆、とっさにトラブルに巻き込まれまいとして目を逸らし、そそくさと立ち去っていった。
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