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店を出ると、先程有希が倒した男達がいた。手にはどこから持ってきたのか、鉄パイプを持っている。
彼らが有希の姿を見ると、鉄パイプを振り上げて走ってきた。
「有希、さっきの疑問に答えてやるよ」
秋人は有希の前に進み出る。
男達の有希に向けられていた殺意は、瞬時に秋人へと移る。
鉄パイプが振り上げられる。
鈍い金属音が三つ響いた。
だが、秋人は、倒れていない。
「見えただろう、有希」
有希には見えた。凶器が振り下ろされた瞬間に秋人の体を何かが覆い尽くしていた。
青く澄んだオーラである。
「お前も持っている力だ」秋人は振り返る。「気のようなこれを体に纏えば鎧にもなる」
彼の背後を男達が狙う。
鉄パイプで殴られているはずなのに、彼にはダメージを感じないどころか微笑みさえ浮かべている。
「この力の名前はアスラ……そう呼ばれている」
彼の右足にアスラと呼ばれた力を纏う。
刹那、左足を軸として振り向きざまに回し蹴りを放つ。
男達は勢いよく吹き飛ぶ。
「能力者じゃない素人には本気で力を使ったら死んじまうからな。少しでいい……蝋燭の火を吹き消すように優しくな」
秋人はにっこりと笑う。
「それが僕の蹴りを受け止めた力ってわけだ……」
「そう。まあ、今のがレッスン1ってところかな」
「レッスン1って……」
有希は言い掛けて、背筋に寒気を感じた。
秋人の表情も鋭くなる。
背後に殺気を感じた。
振り返ると、黒いスーツの男が立っている。
「有希……感じるか……?」
秋人が言う。
「ああ……分かるよ」
「あいつは俺たちと同じ……アスラ能力者だ」
そして、自分達に敵意を向けている事も分かった。
「じゃあ、レッスン2と行くか」
秋人が再び前へ出る。
「アスラ能力者相手なら、手加減する必要はない……アスラは目一杯でいい」
青い炎のような力が秋人の両手に宿る。
「例えて言うなら……攻撃する場所で大声を出すような感じだ」
スーツの男も右手に光が灯る。
お互いに拳を引き、真正面から打ち合う姿勢だ。
周囲の空気がビリビリと震えているようであった。放つ殺気、燃え上がるように激しく輝く両者の拳が、そうさせているのだろう。
二人は構えて、束の間静止した。
拳が走る。
動き出しは同時であった。
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