一話 ガラテアというおっさん少年

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 酒場に入れば、酒の匂い、飯の匂い、そして女の香水と、男の仕事の汗の臭いが混じったなんとも形容しがたい香りが鼻を突く。ああ、今日はツイてる。吐いたゲロの臭いが混じらない分マシだ。  木製の椅子やテーブルが所狭しと並び、奥にはカウンター席が、さらには二階まである大きな酒場だ。客は賑やかでお祭り騒ぎなのはもちろんだが、どいつもこいつも既に出来上がっている。一体いつから飲んでいるのやら。それと、俺が酒場を進めば当然、注目を集める。なんでこいつ、ここにいるんだって具合の目だ。もう慣れたが、これはまたひと悶着起こされるかもしれねえな。  カウンター席に腰掛けると、昔なじみの店主が肥えた体を揺らして俺の前に乗り出してきた。 「よお、ガラテア! そのザマじゃあまだみたいだな?」 「ああ、涙が出そうだ。恵みの果実酒(ゴーシュ)をくれ」  酒を待つ間、まあ、当然といえば当然、迷惑と言えば至極迷惑な酔っ払いが絡んできた。お決まりの台詞で、面白みに欠けた。 「おいおいおいおい、ここは酒場だぜえ? なあんでガキがいるんだよお」  タコみたいな色の猿面野郎が絡んできた。どうせなら女に絡んでもらった方が幾分か気分が良いんだがな。腰には剣をぶら下げてるが、体つきはひょろいし、衣服もボロい。大した腕じゃないな。
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