一話 ガラテアというおっさん少年

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「さっきの借りを返させてもらうぜ!」 「遠慮するな、そのまま貸してやる」 「うるせえ! みんな、やっちまおうぜ!」  囲まれそうになるが、俺は酒の残りを男の顔面にかけて一瞬の注意を引くと、剣を抜いて猿面の前髪を切り揃えてやった。毛がはらりと床に落ちると同時に、盗賊たちは我に返る。驚き仰け反った彼らは武器を構えるが、動揺したのが見てとれる。好機だ。  俺は剣を振るって先制した。一人の武器を叩き落とし、二人目のナイフを払い、三人目の剣を落とし、四人目の短剣を弾き飛ばした。そして女の手からは紳士的に優しく武器を奪った。  咄嗟で構えが雑な連中の武器を落とすのは簡単だった。多少剣を知る人間なら、決して武器を落とさないであろう一撃が面白いように決まり、相手は武器を失ってうろたえる。俺は猿面に剣を突き付け、迫る。 「俺に構わず静かに酒を飲め。それができるなら許してやろう」 「ぐっ……くそっ、なんでガキがこんなに強いんだよ!? わ、わかったよ、すまねえ、お前の言うとおりにする。だから、剣を下してくれ。頼む」 「物分かりがいいやつは長生きするぜ。時に、俺のことをガキだと言うがお前、歳はいくつだ?」 「歳だと? 俺は二十六だが、それがどうした?」 「なんだ、俺より若いのかよ」 「…………は?」
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