終わりと始まり

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四月。 札幌はまだ少し肌寒い日が続いていて出勤時のトレンチコートは必須だけれど、深く息を吸い込むと春の匂いがするようになってきた。 私は、春が一番好きだ。 夏は暑がりの私には辛い季節。 秋になるとすぐに冬がくるような気がしてブルーになる。 冬は雪が酷いと仕事に行くのが億劫になる。 その点、春に対して嫌なイメージは一つもない。 「おはようございます」 「七瀬さんおはよ!今日すごい地下鉄混んでてヤバくなかった?押し潰されて呼吸出来なくなるかと思った」 「そんなに混んでたんですか。私、ここまで徒歩で来てるので共感出来なくてすみません」 「徒歩で出勤とか羨ましいわ。私もこの近くに引っ越してこようかしら」 職場に着くと、いつも眼科の看護師さんとの雑談から一日が始まる。 私が配属されている眼科は、医師は男性だけれど後は全員女性だ。 最初、女性ばかりの所で働くことに不安ばかり抱いていたけれど、幸い意地悪な先輩はいなかったため、すぐに馴染むことが出来た。 転勤がない職場で良かったと、心から感じている。 「そういえば七瀬さん、明日って院外研修の日だっけ?」
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