プロローグ

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彼と出会った日のことを、私は今でも鮮明に覚えている。 あれは今から六年前の春。 三年制の専門学校を卒業した私は、視能訓練士として現在の勤め先でもある札幌中央病院に就職した。 勤務初日は、自分の職場に配置される前に新人の同期が全員一ヶ所に集められ研修を受けた。 職種がそれぞれ違う同期が数人いる中に、彼はいた。 「甲斐悠里です、よろしく!」 「あ……七瀬依織です。よろしく」 勤務初日に私はとてつもない緊張に襲われ、足が震えそうになっていた。 私は昔から緊張しやすい性格で、小学生の頃は学校で席替えがある度に緊張してしまい、よくお腹をこわしていた。 それは残念ながら大人になっても変わることはなく、勤務初日の前日は一睡も出来なかったくらいだ。 そんな私の緊張が伝わってしまったのか、甲斐は明るい笑顔で私に自己紹介をし、握手を求めてきた。 「深く息を吸って、ゆっくり吐いてみな。少し緊張が和らぐから」 私は戸惑いながらも甲斐に言われた通りに深呼吸を繰り返した。 すると、それまで私に襲いかかっていた緊張が徐々に薄れていくのを感じた。 「ありがとう……少し落ち着いた」 「どういたしまして。なんか、酷い顔してたからさ」 そう言って甲斐は、白い歯を見せて笑った。 眩しい人。 それが、私が甲斐に抱いた第一印象だった。
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