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「クマが酷いわよ、ヒカル」
「寝てないからね」
「それで、その編みぐるみは何なの?」
「かわいいでしょ、鳥さんだよ」
「……相変わらず趣味が悪いわね」
私の手には黒い鳥の編みぐるみがあった。
その鳥の羽根は虹色で、赤、青、緑などいろんな色のマフラーを巻いている。
これを見ればきっと、あの女性は後輩君が見ていたものに気づくだろう。昨日、あの女性は私が緑色のマフラーを着ていたのを見ているのだから。
後はこれを鳥小屋に仕掛けるだけだ。
「ごめん、アカリ。肩車してくれない?」
「は?」
「一生のお願い!」
「それ、昨日も聞いたけど!?」
悪態をつきながらもやってくれる親友だからこそ、私はアカリを信じられた。
二人重なり、よろめきながら、私は例の鳥小屋に編みぐるみを設置した。
――願わくば、あの女性にとってこの編みぐるみが特別なものとなりますように、と私は願った。
――何の役にも立たない、特別な日付けを見る未来予知。
そう思っていたけれど、もし22日を特別な日だと思っていなければ私は虹色のマフラーを着なかっただろうし、後輩君の死やマフラーの特別を失ったことを気にすることはなかったかもしれない。必然的にこんな行動もしなかっただろう。
そう思えばこの役立たずの能力にも少しは愛着が沸くというものだ。
私の力は、私自身の特別にまでは及ばない。だから、例え私がこの編みぐるみに特別な想いを抱いていても、それは誰に気づかれることも無いだろう。
例えそうであったとしても、私はこの鳥小屋に誰にも見えないハートマークを生涯送り続けるに違いない。
顔も知らない後輩君を、私は生涯特別に思い続けるのだ。
それが愛と知りながら――
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