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――どうやら今日は私にとって「特別」な日になるらしい。
自分の話なのに、らしいってどういうことって話だけれど、私にもよく分からないのだから仕方がない。
私は自室の壁にかけてあるカレンダー、その本日の日付に「特別」のハートマークが燦然と輝くのを見ながらそっとため息を吐いた。
――物心がついた時から、私は「特別」を見ることができた。
もちろん最初は見えているものが何かは分からなかった。
初めて見たのは両親の姿からだった。
母から父へ、父から母へ、柔らかな光のようなものが流れているのが分かった。ソレを見て私は泣いた。怖いものだったらどうしようという不安と、それを上回る優しさにどうしようもなく心が動かされたのだ。
思い切って二人に「コレは何か?」と尋ねても納得のいく答えはなく、幼心にコレは私以外には見えていないものであることを悟った。
それからの人生、ソレが見えたとしても私は無関心を貫き続け、人知れず考察を続けた。
そして、強弱はあれど誰にでも存在するソレが、誰かにとっての「特別」という感情であるという結論を得たのであった。
ここだけの話、最初はソレを「愛」だと勘違いしていた。
そのせいでいつしかソレは私にとって光ではなく、ハートマークとして認識されるようになってしまった。悔やんでも悔やみきれない失敗だった。実際にはただの「特別」であるのに、ハートマークと認識するとどうしても恋愛に結び付けてしまうのだ。まさに百害あって一利なし。
――今月に入ってカレンダーを捲り、本日2月22日に見慣れないハートマークがあって少しでも浮足だった私の気持ちを分かってほしい。
舞い上がるだろう。思わず叫びたくなるほどに。
それが例え、ただの「特別」なイベント発生のフラグであったとしても、特別な青春の始まりを期待してしまった私を許してくれ。
その結末があんなことになるだなんて、この時の私はまだ知らなかったんだ。
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