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そっか、恥ずかしくて死にそうなら隠せばいいじゃん。
特別な想いが見れる目に失望したなら隠してしまえばいいじゃん。
幸いにも冬という季節はそれができる便利なものあるのだから。
思い立ったが吉日。チキンになった私はより正しいチキンになるべく、マフラーを編んだのだった。
小学校からずっと手芸部の私の両手が火を噴いて、マフラーはわずか一日で完成した。自分の才能と熱意が怖い。
最初に作ったのは真っ赤なマフラーだった。低身長な私に似合わない緩めで大きいマフラー。いつか恋人ができたら余裕で二人で温まることができる素敵なサイズだ。
それをつけて通学した時の親友のアカリの台詞――
「……気でも狂ったの? ヒカル」
にぐさっと胸をやられたのは記憶に新しい、というかわずか3カ月前のことだ。私、短い間にとんでもない黒歴史を着々と築いている気がする。
そんなことがあって、あれから3カ月、マフラーにフルカラーそろえるにも十分な時間が経った。
そんな私の自信作がこれ――ど派手な虹色のマフラー。キュートでしょ。
というわけで、2月22日、特別な今日。特別な朝。当然自信作で通学するよね。
私は虹色のマフラーを首というか顔まで巻き付け、背中側に生地の残りを流して翼のようにして、玄関から飛び出した。当然ながら、通学路で出会ったアカリは怪訝な顔をして、
「お願いだから半径2メートル以内に近寄らないで」
と親友とは思えない暴言を吐いた。ごもっともだ。
だがしかし、私も私で翼をもがれるわけにはいかない。断腸の思いでその条件を飲んだ。
「アカリー……」
「聞こえないわ」
「聞こえてるじゃん」
「話しかけてこないで」
「そんなご無体な……ごめんなさい」
同じ人の顔とは思えないほど嫌がってたよアカリちゃん。
何はともあれ、アカリと一緒に学校へは行けそうになかった。
病院の前のバス停で私は手持無沙汰な状態となり、空を見上げた。
(意外にみんな知らないんだよね、ここの街路樹に鳥小屋がついてること)
多分私の住むこの町に限った話であるけれど、いずれの街路樹にも自然保護の一環で鳥小屋が設置されているのだ。
(まあ、私もこの前まで知らなかったけどね)
うん、今日もついている。
鳥小屋に一際色の濃いハートマークが。
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