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どうすればあの女性に後輩君が恋愛をしていたことを知らせることができるのだろう。
泣きながら思考を巡らせるうちに、考えがまとまっていき、私は最終的にその疑問にぶつかった。
後輩君は恋愛をしていた。短い人生でも決して、何もできなかったわけではなかったのだ、とあの女性に伝えたいと思ったのだ。
実は一つだけそれが出来る方法を思いついていた。
言葉で説明することができないのであれば、あの女性自体に察してもらえばよい。
私ならそれができる。
けれど、もしそれをすればあの女性の「虹色の鳥」は死んでしまう。あの女性は真実に気づき、後輩君が私を見ていたことに感づくだろう。
……願っていたことだ。
けれど、ここにきて私は怖気づいた。後輩君の恋の相手が私なんかでよいのだろうかと。99%間違いないとしても、1%は間違いかもしれないのだ。本人に聞かない限り、気持ちなんて分からない。もしかしたら後輩君はただのマフラーマニアだったのかも……。
――そんなことはありえない、って分かっていても、私なんかに一目ぼれする方がありえないって思ってしまうのだ。例えあの女性にかわいらしいと言われていても、そんなお世辞を信じてしまうほど私は素直ではない。
そう、もし私が信じるのであればーー
『……今何時だと思ってるの? ヒカル』
『……何時だっけ?』
『夜2時よ。寝ぼけているようなら明日かけなおしなさい』
『待ってアカリ、一つだけ聞かせて』
『……一つだけならいいわよ』
『私ってかわいい?』
『切っていい?』
『ちょっと待って! 一生のお願い!』
『……』
『どうしてもアカリの口から聞きたいの。お願いだから教えて』
『……何があったか知らないけど。ヒカル、あんたはかわいいわよ。明るくて、小さくて、全ての行動が突飛で飽きなくて、まるで小鳥のようね』
『……アカリが男だったらほっとかない?』
『質問が二つになっているけど……そうね。私が男だったらきっと一目ぼれしているわ』
『ありがとう、アカリ』
『お礼は忘却でいいわよ。おやすみ、ヒカル』
電話が切れる。
私の覚悟は決まった。
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