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「うわぁー! お兄ちゃんがまだかわいい時だ! なのに、9年後にはこうなるなんて……」
「いいから、その、くすのき? さんって人誰だよ」
「この人」
紘夏がそう言いながら指さした人は俺の隣に座っている女の子だった。出席番号隣だったんだ。
「……あ、思い出した。確か入学式の時蝶ネクタイが曲がってるとかなんか言ってきた奴だ」
「やっと思い出した。まぁ、お兄ちゃんたちは仲良くなかったもんねー」
「で、その楠木さんがどうしたんだよ」
「そうそう。紳から聞いたんだけど、さやかさんとお兄ちゃん同じ高校みたいなんだけど、もう会った?」
「9年も経てば顔が変わってわかんねーだろ」
「あ! ちなみに名字が変わってて“じんない”になってたよ」
「ふーん……」
ん、じんない? ってことはじんないさやか? 俺はその名前を最近聞いた気がした。
「まぁ、高校はたくさん人いるし、どうせまたお兄ちゃんは誰とも話さず孤立してるだろうから会うチャンスもないだろうけど」
「いや、会ったぞ。陣内沙彩花。クラスも部活も一緒だ」
「はっ!? お兄ちゃん同じクラスのくせに分かんなかったの!? って、お兄ちゃん部活入らないんじゃなかったの?
「俺も入る気はなかったんだけど、いろいろあって入れさせられたんだよ」
「何部?」
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