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狭山には霊感があった。それはかなり鋭く、道を歩いている時にぶつかりそうになる人は大体この世の人間ではないし、この前は倒れている人の安否確認をしようとしたら周りの人に気味悪がられた。それだけ鮮明に見えてしまうのだ。
華山から見つめられた時、背中を人差し指だけでなぞられたような戦慄に襲われた狭山は既に華山をこの世の人間か否か、疑っていた。
考えを膨らましながら電車へ乗ると、狭山をいつもいじめてくる「橋本」「安倍」「神崎」に出会ってしまった。彼らは狭山を見つけるとまるで獲物を捉えたかのように舌なめずりしながら近寄ってきた。
「よぉ、狭山」
3人に囲まれた、特にリーダー格の安倍が狭山の方をつかむ。
「…お前何持ってんの」
さっき貰ったばかりのお菓子を安倍が抜き取る
「ざびえるだってよ!」
右から覗き込んだ神崎が小馬鹿にしたように笑う。
少し掠れた声で笑いながら神崎はお菓子を床に投げつけ踏み潰した。
狭山は何も出来なかった、やめろと、言いたかったがそんなことが言えるほどの力がなかった。
電車が止まった、狭山はお菓子を拾い足早にその場を去った。
学校に入るとまた上靴がない、いつもの事だから職員室前のスリッパを借りる。スリッパで廊下を歩いても誰も不思議そうに見てこない、なぜならそれがいつもの事だから。
教室でもひとり、昼休みになると寝ているふりをしてうつ伏せる、それも変わらぬいつもの事。
いつかそんな日が変わることを狭山は祈っていた。
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