「たとえ、かしこくても。」

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「たとえ、かしこくても。」

あーあ。 なんか面白いことねーかな。 ふと駅の構内でそのチラシが目に飛び込んできたのは、 そんなことを考えながら歩いていた矢先… 大学3年の春の出来事だった。 「……なんだこれ」 求人誌や広告チラシが並んでいる棚、本当にど真ん中に、それはあった。しかもたった1枚だけ。まるで俺に「取れよ」と言わんばかりに。 俺はそれを手にとった。 チラシにはこう書かれている。 〈被験者募集!〉 美少女2人と同居して、報酬をゲットしよう! ・成人男性を対象とし、恋愛感情に関する実験を行っています。 ・1ヶ月間、ある美少女2人と同居していただきます。 ・女性にかかる食費などの生活費用はご負担下さい。 ・同居を終えたら、簡単なアンケートにお答えいただきます。 ・薬の投薬、生活の制限などは一切必要ありません。 ・実験を終えた時点で、同居した女性2人と接触することはできなくなります。ただし女性から再会の希望があった場合を除く。 ・実験の最後まで協力してくれた方には、報酬として 「さ…さんびゃくまん!?」 報酬として300万円を支払います。 何度みても、チラシにはそう書かれている。 「すげー新手の詐欺だな……」 可愛い女の子2人を家に送り込み、金品を盗ませる魂胆だろう。そんな無茶苦茶なやり口に、ひっかかる阿呆がいるのだろうか。 どうしよう、通報しようか。すぐ先には駅の窓口も、交番もある。しかしそれも馬鹿らしい気がした。置いてあったチラシはたった一枚、しかもただの悪戯かもしれない。俺が破って捨てれば済む話だ。 そう思うも、俺はそのチラシを捨てられなかった。最後の一行が、どうも俺のための言葉であるような気がして仕方なかったのだ。 「この経験が、きっと貴方の人生を変える」
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