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9月。
朝摘みもそろそろ終わりの頃。
「やられてる!」
目の前の惨状にガッカリする私がいた。
陽当たりの良いベランダに、プランターで四季なりの苺を育てていたのだけど。
赤く色づいた実をつついたように食べられてた。
きっと鳥だ。
肩を落としてリビングに戻ると、
「おはよ」
いつもはまだ寝ているお母さんが、不機嫌な顔で珈琲を飲んでいた。
「李、今日は学校終わったら真っ直ぐに帰ってきて」
「…うん」
きっと大事な話があるんだ。子供でも分かる。
「行ってきます」「いってらっしゃい」
スナックに勤めるお母さんは、私が玄関に向かうと、眠たそうに欠伸をして寝室に入って行った。
公立試験まであと半年。
中学三年の私は、受験勉強もそこそこに普通の毎日を送ってた。
李なんて名前以外は、本当に平凡で、自分が誰かと恋愛するとかも想像すらできなかった。
「中本ーー!」「あいつ、どこ行きよった!?」
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