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入ってすぐ、誰も入っていないと思ってたのに、一番端の個室のドアが開いた。
ドア下から、二年生カラーの上履が見えた途端、
「キャッ!!」 と、短い悲鳴を上げてしまった。
なぜなら、
「シッ!」
個室から出てきたのが男子だったから。
「なっ」
そのうえ、
「っ!?」
いきなり、私の口を手で塞いで声を奪った。
誰?!
私の口を覆った手からプゥンと煙草の匂いがした。
明らかに校則違反の長目の髪、改造した制服、男なのに耳に光るピアス、
「アイツら、まだ俺の事探し回ってるな」
外の様子に聞き耳を立てる不良。
この人、″ 中本 ″ だ。
同じ学校にいるのに、初めてちゃんと姿を見る。
「あ、足音、二階に行った」
煙草臭い手から解放されて、″中本″ と目が合った。
狐みたいにつり上がった切れ長の目と…。
「…」
その細い目が大きく見開かれ、私の像をしっかりと捉えていた。
鋭い目付きに怖さを覚えた私は、一瞬、漏らしそうになった。
そうだ、私、ずっとトイレ我慢してた!
「出てって!変態!」
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