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走り出した車の窓から、旦那さんの家が見えて。
その庭で、赤ちゃんを抱く女の人がチラリと見えて、俺は思わず笑顔になった。
良かったなぁ。
今はちゃんと、お母さんに抱っこされてんだな。
あの後、赤ちゃんの母親は仕事を辞め、両親の住む実家へと戻る事になったらしい。
退院直後、すぐに俺の所に来て、何度も何度もその頭を下げていた。
でも本当は、俺の方が頭を下げたい気分だった。
あの赤ちゃんがいなければ、俺は間違いなく空き巣で捕まっていたし、その後も路頭に迷っただろう。
俺があの子を助けたんじゃなく、あの子が俺に助けさせてくれたんだ。
自分の命と同時に、俺の人生も救ってくれた赤ちゃん。
まるで強運の女神様だ。
後から教えてもらったところ、赤ちゃんの名前は『結』というらしい。
名は体を表すというけれど、まさにその通りの子だと思う。
ありがたい縁を結んでくれて、感謝してもしきれない。
ご縁ついでに、俺は近いうちに別れた嫁さんに連絡を取ろうと思っていた。
ヨリを戻そうとは思っちゃいないが、どうしているかが気にかかる。
近況を聞いて、こっちもなんとかやっていることを伝えて、出来れば息子の顔も見たい、なんて。
今更、ムシが良すぎるだろうか?
連絡をするのは勇気がいるが、それでもきっと大丈夫だと思う。
なんてったって、こっちには強運の女神様がいるのだから。
電話をかける、その前に、
旦那さんにお願いして、
結ちゃんを拝ませてもらおう。
俺はそんな事を考えていた。
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