《不運な空き巣》

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《不運な空き巣》

はっきり言って、俺はダメ人間だと思う。 手先も人間関係も不器用で、褒められることなんかほとんどなかった。 探究心や向上心は、子供の頃にどこかに置き忘れてきたようだ。 物心ついた頃から頭が悪く、学歴は当然のように義務教育だけしかない。 でも中学を卒業した時の俺は『これで嫌いな勉強をしなくてすむ』とむしろ喜んでいたものだ。 無知って怖いよな。 世間の『中卒』に対する厳しさを、昔の俺に教えてやりたいと今は思う。 そんなんだから、せめて見た目だけでも整っていてくれれば良かったのに。 残念ながら、俺の外見はイイ男とは程遠い。 背が低い上に、掘りが浅くて、顔もデカい。 天は二物を与えずと言うけれど、一物だって与えられていない人間もいる。 それが俺だ。 でもまぁ、それだけならまだ良い。 俺が一番ダメなのは、どうしても時間が守れない事だった。 なんで時計なんてものがあるんだろう。 そんなモノがあるから、きっちり時間を守らなきゃいけなくなるんだ。 時間なんて、昔みたいに太陽を見て大体の見当をつけるだけでいいのに。 そうすれば俺みたいに時間が守れなくて困る奴も、 遅刻が原因で、仕事をクビになるヤツもいなくなるのに。
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