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「うわ、臭っ!…なんだ、これ…?」
思わず口に出してしまうくらい、部屋は臭くて汚れていた。
脱ぎっぱなしの服、食べっぱなしの汚れた食器、空のペットボトルに空き缶。
それらが散らばり、足の踏み場も見当たらない。
この時の俺は、自分が空き巣であることを忘れていた。
金目の物を物色してとっとと逃げれば良かったのに、あまりの散らかりっぷりに呆気にとられてしまった。
そして興味本位で、ソファに脱ぎ捨てられたワンピースをつまんで持ったのが運のつき。
「……うぇ!?」
その布の下には、目を閉じて、ピクリとも動かない赤ちゃんがいたのだ。
「えっ、ちょっ…ま、待て待て待て…え、えぇ~???」
動かないのは寝てるからだよな!?
まさか死んではいないよな!?
そっとほっぺたに触れてみる。
ぷりぷりの肌はほんのりと温かくて、思わずほっと息を吐いた。
けど、このままで良いのか?
親はどこ行ったんだよ?
見た感じ、目の前の赤ちゃんは死んではいないが元気でもない。
涙やよだれが乾いて肌にこびりついているし、長時間放置されていただろう事が見て分かった。
「………まいったなぁ…」
これで死なれたら気分が悪い。
せめてミルクだけでもあげてやるか。
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