《不運な空き巣》

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赤ちゃんのミルクを作るため、とりあえずキッチンへと向かった俺は、そこでの惨状に絶句した。 山のように積まれた食器。 放置された鍋にフライパン。 カップ麺やコンビニ弁当の空き容器からは、すさまじい異臭が漂ってくる。 これは…哺乳瓶を探すだけでも骨が折れそうだ。 カウンターに置かれた湯沸しポットには、ミルク用の低い温度で保温する機能が付いてるらしいが水が少しも入っていない。 そして、そのポットに水を入れたくても、食器が邪魔で水が汲めない。 ………。 深いため息を一つ。 仕方なく、俺は山と積まれた食器を手に取って、洗い始めた。 洗いながら、邪魔なコンビニ弁当の容器なんかをゴミ袋に放り込んでいく。 次々に食器を水切りカゴに積みあげて、最後の最後でようやく哺乳瓶を発掘した。 ついでだからと全ての食器を洗い終え、ポットに水を入れてスイッチを入れる。 そして沸くまでの間、部屋で異臭を放っていたコンビニ弁当の空き容器もゴミ袋の中に入れていき。 ついでに缶やペットボトルも、キッチンで見つけた資源ごみの袋に回収する。 それが終わった頃、ようやく沸いたお湯でミルクを作った。 こんな俺でも、結婚していたことがある。 その時はちゃんと世話だってしてたから、ミルクの作り方だって知っているのだ。 思えば、短い結婚生活だった。 転職を繰り返す俺に呆れた嫁さんが子供を連れて出て行って、それっきりになっているけど。 今はどうしているんだろう? 二人とも、元気にやってるかなぁ? …なんて、俺の切ない過去はどうでもいい。 出来上がったミルクを持って、俺は赤ちゃんの元へと向かった。
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