ふたり歩く道

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「初代白剱騎士は女性だったそうだ」 「なるほど、納得」 図書館の交流室でお喋りをしながら世界の船を見た。 夢中になっていると夕暮れとなり、食事をして帰ることにした。 だが夕食には、まだ少し早い。 シェイドがふと言った。 「そういえば髪飾り、替えてないな。髪飾りがないのか?それが気に入っているのか?」 「うん、髪飾りなんて簡単なものしかなくて、彩石入れるような凝った作りのは持ってないよ。できればこれは大事に取っておいて、普段、気軽に使える髪飾りが欲しいなって思ってて、ずっと忘れてた」 「なら、今から買いに行こう」 「そうだね」 頷き合って、大通りの店に行く。 「彩石が取れないように、それなりにしっかりとした作りのものがいいから、あんまり安すぎないのにしないと」 「トルム通りかミナリ通りがいいんじゃないか?」 トルム通りは職人街で、一点物、少量生産の品など、ひとつひとつにこだわって作っているものを売っている。 ミナリ通りは服飾街で、職人街から仕入れた一点物、少量生産の品のほかに、工場で作られた大量生産のものも売っている。 見比べるなら、ミナリ通りが一番だ。 「そうね、ミナリ通りにしようかな」 大通りの店は、大量生産のものを取り扱っている。 値段に見合う意匠や丈夫さの違いがあり、ここでも望みのものは手に入りそうだったが、ミナリ通りに行くことにした。 彩石が立派なので、普段使いでも、それなりの台座にしたい。 ふたりはそのままミナリ通りに向かい、髪飾りを置いている店を探した。 あまりに高そうな所は避け、安いものから高いものまで幅広く扱う店を選ぶ。 そこでミスエルは、一対の髪飾りを見付けた。 明らかに結婚した者たち用、すなわち伉儷(こうれい)用だ。 ふたつなのでそれなりに高いが、シェイドに似合いそうだった。 「いいのがあったか?」 「うん。シェイディクも替える気ない?この一対のが欲しいと思って」 どれ、と見て、シェイドは頷いた。 「ああ、替えよう。それだけでいいか?」 「今のところは、これだけでいいよ」 そう決まり、ふたりはその髪飾りを求めて、無料で早速彩石を入れ直してもらった。 互いに髪飾りを付けて、似合っていると頷き合う。 店を出ると夕食にはもう少しだけ早く、ふたりは北門前広場からチュウリ川を眺めた。 船の行き交い、人の流れ、次第にともる街灯。
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