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「アーク様の機警隊として、あなたたち以上の働きをしたいのよ。当然でしょう?」
政王機警隊とは、アルシュファイド王国双王の1人、政王アークシエラ・ローグ・レグナ…アークの直属の部隊だ。
ハイデル騎士団は、国家の重要人物として相応の扱いを求められる国格彩石判定師ミナ・イエヤ・ハイデルを守るための護衛団なので、並び立とうとするのは当然かもしれない。
「お前たちはまだ、特別な任務はないのか?」
「あるけど、ほかの者たちが行っていて、私はまだなの。取り敢えず書類関係を片付けてるわ」
「彩石騎士たちは楽になったろうな」
彩石騎士とは、有事の際に双王の代行を務める地位の高い騎士だ。
その彼らの通常の仕事は、双王に課せられた膨大な書類仕事なのだ。
機警隊は、その処理を手伝っている。
「そろそろ彩石騎士も動くのじゃないか。留守を守るのも機警隊の務め。やること山積みだな」
「なんとか分担してやるわ」
「その調子だ。じゃあ、俺は先に行くな」
ムトは茶を飲み終えて席を立った。
パリスも席を立ち、ほかの騎士らに席を空けてやる。
部屋に戻ると準備を済ませ、騎士たちの住居である黒檀塔を出る。
正門から続く橋を渡って王城前の大通りに出ると、表神殿と呼ばれる施設のなかを突っ切る。
そうして、北門前桟橋の総合案内所に行くと、ちょうどいい時間帯の船に乗る。
アルシュファイド王国は整備された国だ。
新緑の景色が過ぎると次は深緑、黄葉、紅葉、朽葉と色を変えていく。
フェスジョア区は朽葉色だが、着いたのが19時で陽が落ちていたため、街灯ではよく判らない。
パリスはフェスジョア区東桟橋から出る馬車のひとつに乗り、ボルドウィン家に戻ってきた。
食事室に入ると、父カルトス・ボルドウィン、母ナタリイ・ボルドウィン、兄クラン・ボルドウィンと弟セレブ・ボルドウィンに迎えられ、再会を喜んだ。
食事を終えて、居間に入ると、それで、とパリスは兄に聞く。
「俺の義理の姉になる人はどんな人だ」
「勇敢でかわいい。知的で澄んだ緑の瞳をしている。惚れるなよ」
「はいはい。しかし婚約してから長かったな」
ボルドウィン家長男の婚約記事は情報伝達紙にすら載ったのだ。それが1年近く前。
「色々と忙しかったんだ。それにユリアラの心の準備がな」
「ユリアラというのか」
「ユリアラ・テノーラ。俺と同じ年だ」
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