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休日を楽しむ
アニースはひとりより誰かといる方が好きだ。
休日ともなれば遊び相手を探して回る。
しかし鍛練も大事なので、今朝はまず火の鍛練場に行って正確に火を発する訓練をする。
大きさも制御して、特に細い線を出すことを試みる。
それを見ていた機警隊の女騎士メニエキエラ・アンバーチェイン…キエラが、火を消した所で両手を叩いて言った。
「見事だね。そこまで細く火を操れるとは」
アニースはにこりと笑って、ありがとうと言った。
「ほかに何ができる?」
「火を消すことができるよ!自分の操れる範囲の火を消すのとは違って、消滅させるんだ。ちょっと火を出してごらんよ」
「こうか?」
キエラは空中に肩幅程度の火の線を出した。
「そうそう。いくよ」
ぱしゅ、と空気が抜けるような音がして、目の前の火が消えた。
キエラは、押し潰されるような感覚に目を見開いた。
「今のなんだい!?」
アニースは驚かせることができたことに気分をよくした。
「同じところに火を出現させたのさ。そうすると互いに打ち消し合って、消えちまうんだよ。ま、異能で出した火に限るけど」
「普通の火は消えないのか?」
「消えるんだけど、一瞬だけでね、空気が戻るとまた燃え上がるんだ。異能の火には火種がないけど、普通の火には燃えるものがあるからね、元を断たなきゃいけないみたいなんだ」
「ほー、そうなんだ。それって基礎修練の成果?」
「もちろん!それなしじゃやってけないよ。キエラは基礎修練やってるか?」
「ああ。今朝は久し振りに鍛練に来たんだ。思い切り火を出したくてね」
「じゃあ相手しよう。いくよ!」
アニースは全力で火を出して、キエラに向けて放った。
キエラは自分も火を出して全力で押し合う。
力量はキエラの方が上だったが、アニースは1点に集中して押してきて、キエラはやがて押し負けて逃れた。
アニースの周りを火で囲い、結界で覆ったが、これも1点集中で敗れた。
何度も力をぶつけあううち、キエラは、1点の火の濃さが違うのだと気付いた。
同時に、火に厚みなどというものがあることを初めて知った。
互いにへとへとになるまで全力で力を出し合い、終えると、肩で息をしながら、キエラは言った。
「あんたのそれ、なんだい。火の濃さが普通と違うよ!」
アニースはえへへと笑って答えた。
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