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「これも基礎修練の成果さ!力量では劣るけど、その程度の制御なら、まだ私の方が勝つね!」
「ほんとう、まだまだ修練が足りないみたいだね。明日からまた集中しよう」
座りこんでいたふたりは立ち上がって、湯を浴びたら食堂で落ち合おうと話して別れた。
汗を流したふたりは食堂に行く途中で一緒になり、配膳台に並ぶと膳を調えて露台に出た。
互いに休みであることを確認して、何をして遊ぼうかと話す。
「天体球っていうのを見に行かないかい。ただ星空を観るだけだけど、きれいなんだ」
アニースが言って、キエラは頷いた。
「初めて聞くね!って言っても、私はレグノリアのことはあまり知らないんだ」
「出身はどこだい?」
「ボルーネ区!フェスジョア区寄り。すぐ北海岸警備隊に行ったから、あんまり知らないんだ」
「へえ。じゃあ今日は案内するよ!トルム通りには行ったよね」
「ああ、色々調達したときね。あのときはありがとう」
「なんの!あたしらは旅慣れてるからさ。そうだ、ボナ川小規模工場群なんてなかなか行かないんじゃないかい。買わなくても、見るだけでも楽しめると思うよ」
そういうことで、朝食を終えると、ふたりは天体球という施設に向かった。
それは白い球体が付いた建物で、球体部分に入ると、宙にふわりと浮き、足元まで星が瞬く空間だった。
ずっと明るい光もあれば、明滅している光もあり、それらはゆっくり近付いたり遠ざかったりしていた。
それらを見ながらじっと漂っていると、奥へ引き込まれていきそうだった。
「どうだい、不思議な感覚だろ」
しばらくして話しかけられ、キエラは、はっとして自分の位置を確認する。
「ああ、不思議な感覚だ。吸い込まれそうで」
「だろう。1人用もあるんだ。入ったことあるけど、何も聞こえなくて、自分以外の人も見えなくて、癒されるんだ。興味があったら試してごらんよ」
今日のところはこれぐらいで帰ろうか、と言い、泳ぐように出口に向かう。
出口は係の者に言うと、下にある蓋を開けて足から入るように言われた。
すると暗い穴に滑り込んで、明るい出口に到着するのだ。
出たところには土産物売り場があり、品物を少し見て天体球を出た。
「うわ、なんだか体が重いね」
そう言うと、アニースは、あははと笑った。
「すぐに慣れるよ。さて、次はボナ川だ」
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