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アニースは南に向かう小道に入って、やがて港通りに入り、レテリム港で乗船券を求めた。
乗降口には人が多く、そのなかに交じって船に乗り込んだ。
ボナ川まではすぐで、船を降りると手前は硝子工場群だった。
うつくしい商品の数々を見て回り、昼食を摂って、陶磁器工場群、繊維工場群と見て回った。
「器なんて使えればいいと思っていたけど、こんなに見たら選ばないのは損している気持ちになるよ」
キエラの言葉に、アニースは笑って、これを機にひとつぐらい買ってみたら、と言った。
「そうだねえ、部屋で茶を飲むのにいいかも」
キエラは陶磁器工場群に戻って、陶器の取っ手付きの茶の器を求めることにした。
夕暮れになり、レテリム港に戻ると、食事にはまだ早いので、楽器などの演奏を聴く奏楽店に入って気持ちのいい音楽を聴く。
しばらく曲を聴くと、食事どきになり、奏楽店を出て少し歩いたところにある食堂に入った。
「今日はありがとう、案内してくれて」
礼をいうキエラに、私も楽しんだよ、とアニースは言った。
黒檀塔に戻り、談話室前を通りかかると、スティンが、今日はどこか行っていたのかと声をかけて来た。
「ちょっとだけレグノリア観光をね。そっちは?」
「フォムステッツで馬に乗ってきた。棒術の鍛練。キャレインたちと」
「ああ、馬の扱いを気にしているようだったもんね。明日は何か予定があるのかい」
「街歩きをしたいそうだ。異国の客人の案内で手間取らないように」
「何やっても仕事だねえ。キャレインたち、ちゃんと休んだ方がいいんじゃないの」
「そうだなあ、どこかいいところあるか?」
キエラが言った。
「今日行った天体球なんていいかもしれないよ。個室がいくつあるか知らないけど」
アニースが聞いた。
「何人行くんだ?」
「俺とムトとマルクトで12人案内するんだ」
アニースは、それじゃ個室は無理だねと言った。
「まあでも、行ってみたらいいんじゃないかな。数人は個室を勧めてみなよ」
「そうする。ところで天体球ってどこにあるんだ?」
「博物館の隣だよ。博物館のある通り、知ってる?」
「知ってる!そんなものがあったのか、気付かなかった」
「白くて丸いのがくっついてる建物だよ。あとはまあ、遊戯場で汗でも流してみたらいいさ」
「お前たちも来ないか?」
アニースとキエラは顔を見合わせた。
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