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「また反撃されるぞ」
「備えは万全だ。お陰でカザフィスでの影響力が増した。近くユリアラと旅行できるようになるかもしれん」
「旅行?」
「ああ。約束なんだ」
クランは幸せそうに笑った。
この笑顔が消えないようにと願う。
いや、願うだけでいいだろうか?
そんなにもハドゥガンタ王国の力が厄介ならば、政王アークも無関心ではいられないのではなかろうか。
帰ったら進言しておこう、とパリスは決めた。
「ところで、セレブの方はどうなんだ。仕事は順調か?」
セレブは金属の細工師だ。
ほとんどの産業はレグノリア区に集まっているのだが、セレブはレグノリア区で仕入れた金属を、フェスジョア区で加工して売っている。
「まあ、小物類は売れてて、そこそこ食べていけてる。好きでやってることだから、俺はいいんだよ」
そんな風に近況を聞き合って、翌日のこともあるので、この日は早めに就寝した。
翌朝、朝早くから鍛練していると、クランが起きてきて、久し振りに手合わせしようということになった。
パリスもクランも異能を使わず、剣のみでぶつかる。
しばらくして、双方剣を引き、クランが言った。
「腕を上げているじゃないか」
「勝たせてもくれない癖によく言う。俺は汗を流してくる。式は何時だって?」
「9時からだ。ラロウシュ邸で行う。見届け人はログストンだ」
「ラロウシュ…誰だ?」
「ユリアラを雇ってくれている。ほとんど引退しているが、商売人だ」
パリスは、ふうんと言って、部屋に戻った。
汗を流して、家族と朝食を摂る。
時間になって、馬車でラロウシュ邸に向かう。
案内された一室には椅子が並べてあり、相手方の親や友人、ボルドウィン家の親類、クランの友人がいた。
時間になると嫁と婿が揃い、見届け人の前に進み出て生涯添い遂げることを望んだ。
式が終わると嫁と婿は部屋を出ていき、馬に乗って新居に急ぐ。
新居はボルドウィン邸だ。
婿側の招待客は急いでボルドウィン邸に行き、嫁入り行列を迎える。
茶を振る舞うちょっとした祝宴が催され、1時間ほどで終わると、嫁と婿以外は後宴の会場へと向かう。
後宴の場所はボルドウィン家が持つ食堂の大宴会場を使い、豪華な昼食が振る舞われた。
その後、パリスとセレブはクランの友人たちに誘われて投擲場に行き、ともに楽しんだ。
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