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「はい。鍛練が終わったら、街のことを知りたくて。アーク様に聞かれたのです。要人を案内するのに、どのような場所が適切かと」
「ああ、難しいね。安全な街だけど、だからって飲み屋街に案内するのはちょっと避けた方がいいかなあ、逆に、そういうところに行きたがったりして…難しいよね」
「はい。私は藁と円の日は完全に休ませてもらっているのですが、平日でも息抜きができるところなど必要でしょうし」
「こないだ行った暖黒石(だんこくせき)の店なんてよかったよ!無防備になるんだけど、寛げるところだった」
「暖黒石…ですか?初めて聞きます」
「暖かいサイセキなんだ。ただ寝るだけなんだよ」
「孔翠石(こうすいせき)の店のようなものでしょうか」
「孔翠石?いや、判らないな…」
「とにかく行ってみます。サイセキは色々なものがありますから、それぞれ特色のある店が見られるんでしょうね。それこそアルシュファイドならではです」
「イルマ、案内してきたらどうだい。1日鍛練するって言ってたろう」
「そうですね。休日ですし、寛いできます」
アニースの言葉に頷いて、イルマは、セレンに一緒に行ってもいいですかと聞いた。
「もちろん!助かるわ」
そんな風に決まり、食事のあと、セレンはイルマと大鍛練場に向かった。
「ひとつ所に砂、風、水を出す技は、空中で方向転換するのにいいんです。見ててください」
イルマはそう言って、上空に駆け上がり、真横、真上、斜めなど、縦横無尽に飛び回って見せた。
「足の踏み場だけでなく、手も使えば、さらに多方向に動けます」
セレンは口を半開きにして言った。
「あなたほどできる自信がないわ…空中に留まっていられる時間が恐ろしく長いのね」
「今だけのことです。成長途中ですから。体がまだ軽いんですよ。でも、確実に変化していっている」
「ああ、そうね。私もまだ成長するし、せめてリザウェラのように軟らかくありたいわ」
「リザウェラの動き、きれいですよね。私、直線の動きが多いので、あの円を描くような動きも修得したいです」
そんな風に話しながら鍛練して昼になり、2人は昼食を終えると暖黒石の店に行った。
暖黒石とは暖かくて黒いサイセキで、この上に横になって時間半ばを過ぎると、じんわりと汗が流れてくるのだ。
「孔翠石は蒸気浴だったけれど、こちらは蒸気ではないのね。面白いわ」
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