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太陽が暴力的な程に輝いている。
空は抜けるように青いし、空の色を映す海の水面も勿論青い。
砂浜の白に、椰子の葉の緑。
真っ赤なパラソルが乱立し、その下で沢山の人たちが南国を楽しんでいる。
私がいるパラソルの前を、日本人カップルがはしゃぎながら走り去って行った。
女の、その甲高い声に思わず顔をしかめる。
ここに来たことは、やっぱり間違いだったかもしれない。
南国特有のからりとした暑さと反比例するように、私の心は冷え冷えとしていた。
別に、海が好きな訳でなはない。
海外旅行も今回で漸く人生二回目だ。
それでも私は週末深夜に飛ぶ飛行機と、出来るだけ海に近いホテルを押さえてここまで来た。
東京の、あのマンションには帰りたくなかった。
あの部屋で待っているのは、一人でいるのは広すぎる空間と、私の心以上に冷え冷えとした空気だけだった。
温かさとか、人の声とか、……あいつがいなくなったあの部屋。
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