海辺の家

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帰り道、颯太と私は一緒に夕飯をたべたり、 山猫に顔を出して、お酒を飲んだりする。 颯太は静かに家族を失った悲しみを受け止めている。 時折、我慢できなくなったように私の体を抱きしめて、くちづけするけれど、 ゆっくりと体を離して、家に送ってくれる。 そばにいるよ。颯太。 私は声に出さずに何度も颯太を見つめている。 私を見つめる颯太の瞳は優しく、柔らかだ。 試作を重ねた新作のケーキが出来上がった。 ダークチョコレートとチェリーのケーキだ。 プラリネをアクセントにしたそれは、 今の颯太の自信作だ。 ハーモニーと名付けられたそのケーキはgateauの人気商品となり、 ホールで買い求めるお客様も多くいた。 昔の颯太と今の颯太がひとつになって奏でるハーモニー。 パティシエとしての颯太はきっと、才能に溢れている。 ちなみに、 花火を見せていただいたホテルのオーナーの南さんのお嬢さんのウェディングケーキは、 南さんのリクエストで、ハーモニーを土台にして、 キルシュ(サクランボのブランデー)で香り付けしたクリームや、華やかなチョコレート細工、美しい飴細工で薔薇の花びらでデコレーションされた物だった。 もちろん評判は上々で、満足していただけた様子。 お陰で、ウエディングケーキの注文が時折、入るようになった。 颯太は時間ができたので、お断りせず、注文を受けている。 まあ、接客は苦手なので、 お客様との打ち合わせには私が同行することになっているけど…
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