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駅の目の前は春の海。
後ろは丘。
丘の上に広がった古い住宅街に実家がある。
丘の上まで急な階段を上がる。
中、高校生の時はテニス部で、この階段を駆け上がっても、息も切らさなかったのに、
途中で足を止め、呼吸を整える。
後ろを振り返ると、青い海が眼下に広がっている。
「はあ」と腰に手を当てて、景色を見ていると、
「スミマセン、ちょっと通りたいんだけど」
と声をかけられ、慌てて前を見ると、階段を降りてきた男の人と目があった。
「ごっ、ゴメンなさい」と少し避ける。
この階段は地元の人しか使わない階段で結構狭い。
人がすれ違うのは問題ないけど、真ん中に立ってる私がいたら通れないよね。
それにしても背が高い。
私が 165㎝身長があるけど見上げる位だから優に180㎝は超えているかな?
茶色く染めた髪は短く整えられ、清潔な印象だけど、目つきが鋭すぎないか?
切れ長のメガネの奥の瞳は涼しげだけど、
眉間のシワ。どうにかしないと、すっごく怖いんだけど。
とこっそり思いながら彼が通り過ぎるのを待つ。
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