帰郷

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無事、横を通り過ぎ、2、3段降りたところで、眉間にシワの男が急に振り返る。 なに? 「山内美咲?」とフルネームで呼ぶ。 「へ?」 「俺だよ。おれ。」 オレオレ詐欺ってわけじゃないでしょうに… 「風間 颯太(かざま そうた)。」 かざま・そうた? 隣り合った町内に住む同じ年の男の子。 高校まで一緒だった。 よく言えば幼馴染… 悪く言えば喧嘩友達?… 「ああ!…チビで、メガネの!?」 あっと、いま、失礼なことを言ってしまったよね。 と、颯太はみるみる眉間にシワを寄せ 「そう。ガリガリで真っ黒な美咲ちゃん」 と言い返し、さらに、 「階段登りきれなくて、休憩してたんだろ。 いやー、体力落ちちゃってるんじゃないのぉ?」 と口の端を上げる。 「ちょっと!あいかわらず、口が悪いんだなあ、 背は高くなっても、中身は子どものままなんじゃないの?」 と私も言い返す。 「お前もあいかわらず、成長してないんじゃないの?」 と露骨に私の胸のあたりを見る。 カッと顔が赤くなる、 「このお!」と私が手を振り上げると、 「ミサキチが怒ったぁ~、バーカ」 と走って階段を降りながら、声を上げて笑いだす。 そして、振り返って、 「またな、ミサキチ」 とニッコリして、ゆっくり階段を下りて行った。 「…変なヤツ。」 私もおかしくなって、クスクス笑う。 ミサキチって大昔のあだ名だし。 うーん、久しぶりに笑ったかも…
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