コロッセウムで待っていて

きらびやか学園初等科５年、山田ジュテームアームストロング花

　わたしは山田ジュテームアームストロング花。小学五年生。
　ちなみに月はおかーさまだ。おかーさまは年中旅行していて、一体なにをしているのか分からない。
　だいたいいつも不在だが、ある日学校が終わってうちに戻ったら、とんでもないお土産がデンデンデーンと積み上げられていて、その向こうでソバ茶をすするおかーさまが「ただいまおかえりぃ」と笑っていたりする。

　家政婦の妙光寺さんが「奥様、お仕事お疲れ様でございます」とか言っているから、やっぱり仕事をしているんだろうけれど、おかーさまの仕事が何なのか、未だに謎だ。

　へんなうちだなあと思う。
　山田ジュテームアームストロングという苗字もへんだ。
　おとーさまは、「うちは、日本最強の忍者と、ヨーロッパの武芸の名門と、アフリカの戦闘民族の血が混じり合った、知る人ぞ知る家系なんだ」と言っている。
　「忍者と武芸の名門と戦闘民族の人たちが、どうやって巡り合って子孫を残したの」
　と、聞いてみたことがあったが、その謎の経緯は一生かかっても語りつくせないほどの膨大な物語になるらしくて、未だに教えてもらえないままだ。