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妙光寺さんと二人きりの、静かな生活。
さあさあと庭の噴水の音が聞こえてくるほどの、心地よい静寂。
わたしは静かなのが好きだ。妙光寺さんが淹れてくれる緑茶を、畳の間でいただく。
お茶請けの水ヨウカンも、思う存分ゆっくりと味わう事ができる。
子供は賑やかなのが好きって、一体誰が決めたんだ。
わたしは、この静寂の日々を気に入っていた。永遠に続けばいい、いっそおとーさまもおかーさまも帰ってこないでくれと思う程だった。
にもかかわらず。
「花お嬢さん、明日から楽しくなりますよ」
千鳥柄の割烹着で、妙光寺さんが飛び切りの笑顔で言った。
ランドセルを降ろさないまま、帰宅したばかりのわたしは茫然と立ち尽くす。
お父様からお電話が入りました。明日から、同い年のお友達が、このお屋敷に住むことになられました。
楽しみですわねえ。うふ、良かったですね、花お嬢さん。
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