きらびやか学園初等科5年、山田ジュテームアームストロング花

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 「すばる坊ちゃんの部屋は、花お嬢さんの部屋の隣にご用意しました」  千鳥柄の割烹着の肩を直しながら、妙光寺さんは台所に歩き出している。  クラスメート同士、隣の部屋の方が楽しいだろうという配慮か。  「これでもう寂しくありませんねえ」  本気で嬉しそうに言いながら、ぺたぺた廊下を歩いて行った。  妙光寺さんの、カバのお尻の様な後姿を見送った。なんてこった、静かに気楽に過ごしていて快適だったのに、明日からクラスの野郎がやってくる。  (色々、取り繕わなくちゃいけない……)    そもそも、この屋敷は、一般人向けじゃない。  三笠山すばるの居候を許したおとーさま。一体、どうお考えなのだろう。  (三笠山すばる、果たしてこの屋敷で生き抜くことができるか)  彼の人となりを不安に思うより先に、そっちのほうが案じられる。  山田ジュテームアームストロング家は、普通じゃない。わたしなんか、ごく早い頃に気づいたもんね。幼稚園に行っていた頃から、お友達をおうちに招かない方がいいって分かっていた。  こまちちゃんは特別だったけれど。
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